大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和57年(ワ)2026号 判決

原告 奥田武夫

右訴訟代理人弁護士 西村孝一

被告 首都高速道路公団

右代表者理事長 菊池三男

右訴訟代理人弁護士 堀家嘉郎

右訴訟復代理人弁護士 石津廣司

主文

一  被告は、原告に対し、金六〇万七七三五円及び内金五三万七七三五円に対する昭和五六年九月二日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、被告の負担とする。

四  この判決は、主文第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金七七万〇六九三円及び内金七〇万〇六三〇円に対する昭和五六年九月二日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

原告は、昭和五六年九月二日午後八時頃、自動二輪車(車両番号品川め七六二二、以下「本件車両」という。)を運転して、首都高速道路五号線(以下「本件道路」という。)の東池袋インターから約一〇〇メートル竹橋よりの上り第一車線上(以下「本件事故現場」という。)を池袋から竹橋方面に向けて時速約六〇キロメートルで走行中、前方道路上には、高さ約五センチメートル、縦約二〇センチメートル、横約一二センチメートルのコンクリート石塊(以下「本件石塊」という。)が路面から剥離したまま放置されていたところ、右石塊に本件車両の前輪を乗り上げてバランスを崩し、更に、右石塊の前方に存在する幅及び長さ約一メートル、進行方向前半分が道路平面から約七センチメートル沈下し、後半分が約五センチメートル隆起した凹凸面(以下「第一凹凸面」という。)及び右第一凹凸面の約一〇メートル前方に存在する、右第一凹凸面と同様の大きさの凹凸面(以下「第二凹凸面」という。)に相次いで前輪をとられて制御不能となり、転倒して路面に投げ出され、両上下肢打撲、擦過傷の傷害を負うと共に、原告所有の本件車両及び原告が着用していた原告所有のヘルメットが破損する事故が発生した。

2  責任原因

被告は公共団体であって、本件道路の管理者であるところ、前記のとおり、本件道路は、石塊及び凹凸が放置され、道路としての通常有すべき安全性を欠いており、右瑕疵によって前記事故が発生したものであるから、被告は、国家賠償法二条一項に基づき原告が右の事故により被った損害を賠償する責任を負う。

3  損害

(一) 治療費 金一万二七八〇円

原告は前記事故により被った傷害の治療費として、右金額を支出した。

(二) 自動二輪車修理費 金四八万九八五〇円

原告所有の本件車両は右事故により破損し、その修理費として右金額を必要とする。

(三) ヘルメット代 金四万八〇〇〇円

原告所有のヘルメットは、右事故により破損し、その価額は右金額である。

(四) 傷害慰謝料 金一五万円

原告は前記傷害のため東京警察病院に二六日間通院したが(通院実日数六日)、右傷害による精神的苦痛を慰謝するには金一五万円が相当である。

(五) 弁護士費用 金七万〇〇六三円

本件訴訟追行に要する弁護士費用としては右金額が相当である。

4  よって、原告は被告に対し、右事故による損害賠償として、金七七万〇六九三円及び内金七〇万〇六三〇円に対する本件事故発生の日である昭和五六年九月二日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び反論

1  請求原因1のうち、原告主張の事故発生の日時、場所、原告負傷の事実及び右事故現場に凹凸面が二個所存在した事実は認め、その余の事実は否認する。凹凸面の大きさは、いずれも横一五〇センチメートル、縦一〇〇センチメートル、本件車両の進行方向前半分が道路平面から約三センチメートル沈下し、後半分が約二センチメートル隆起したものであるにすぎない。

2  請求原因2は争う。

(一) 被告の本件道路の管理に瑕疵はない。すなわち、被告は、高速道路全般の維持管理を、訴外財団法人首都高速道路協会(以下「訴外協会」という。)に委託し、同協会は、毎日一回全道路につき、交通渋滞、事故及び故障車、落下物等、交通障害となるものの発見、除去を目的とする定期パトロールを行い、また、昼間には毎日一回、夜間は週一回道路の異常の有無、照明の点灯確認、落下物の発見等を目的とする巡回点検パトロールを実施し、右パトロールの結果は右協会から被告に対し、書面をもって報告される。又右のほか、一月二五回路面清掃を行っている。

本件事故発生当日、本件道路の定期パトロールは、午前九時三〇分から同一一時三〇分までの間行われ、巡回点検パトロールは、午前九時から午後三時までの間行われたが、本件事故現場一帯における落下物及び路面の損傷については何ら報告されていない。

(二) 本件事故現場手前における最小視距離は道路照明により七五メートルが確保されており、本件道路上り線の事故当日午後七時から同九時までの間の車両通行量は、一車線あたり四ないし五秒に一台平均で比較的少なかったから、原告は、本件車両の前照灯の照明と相まって十分前方を見通すことができたはずであり、したがって、仮に原告主張の石塊や凹凸があったとしても、原告が法定制限速度(時速五〇キロメートル)を遵守し、また、前方を注視さえしていれば、容易にこれらを発見のうえ避けて通行することができたものというべきである。しかるに、原告は時速七〇キロメートルで前方注視を欠いたまま漫然と走行し、これにより本件事故を惹起したものであり、本件事故は、原告の一方的過失によるものであって、道路の路面状況と事故との間に相当因果関係はない。

3  請求原因3及び4は争う。

第三証拠関係《省略》

理由

一  請求原因1の事実のうち、原告主張の事故発生の日時、場所、原告が負傷したこと、及び本件事故現場に凹凸面が二個所存在したこと(その形状については争いがある。)は、当事者間に争いがなく、《証拠省略》によれば、右事故により、原告はその主張の傷害を負うとともに、いずれもその所有にかかる本件車両及び原告着用のヘルメットがそれぞれ破損したことが認められ、右認定を左右すべき証拠はない(右事故を以下「本件事故」という。)。そこでまず本件事故現場の道路状況及び事故態様について判断する。

1  第一、第二凹凸面の位置及び形状について

《証拠省略》を総合すると、アスファルト舗装をされた本件道路上り第一車線上に位置する本件事故現場の本件道路脇に設置されたポール(番号po―五二八三)から約一三メートル池袋よりの地点に第二凹凸面が、さらに同地点より約六・五メートル池袋寄りの地点に第一凹凸面がそれぞれ存在し、右各凹凸面の形状は、いずれも、原告の主張とは異なり、おおむね被告主張のとおり、道路の進行方向を長径とする長径約一五〇センチメートル、短径約一〇〇センチメートルの楕円形をなすものであって、前半分が進行方向に約三〇ないし四〇センチメートル進む間に道路平面から約三センチメートルを徐々に沈下してゆき、次いでそれから約八〇ないし一〇〇センチメートル進む間に徐々に約五センチメートルを盛り上って後半分にある約二センチメートルの隆起に達し、これから再び徐々に沈んで平面に戻る波状のものであることが認められる。《証拠省略》中には凹凸面の形状についての原告主張に沿う部分があるが、右各部分は、いずれも原告の目測ないしこれを基礎に作成された図面の記載にすぎないものであって、前掲各証拠に照らせば、右原告主張事実を認めるに十分とすることはできず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  本件石塊の存在について

(一)  原告は本件道路上の第一凹凸面の手前に、高さ約五センチメートル、縦約二〇センチメートル、横約一二センチメートルの石塊が存在したと主張し、原告本人尋問の結果中には高さ約五センチメートル、約一〇センチメートル四方以上の大きさの石塊が存在した旨の供述部分があるが、証人山口義男の証言及び原告本人尋問の結果によれば、原告及び山口義男が事故直後に本件事故現場付近を見分した際には、石塊は発見されなかったことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はないから、原告本人の右供述部分は、他にこれを裏付けるに足りる客観証拠を欠く本件においては、直ちにこれを採用できず、他に原告の主張する形状の石塊が存在したことを認めるに足りる証拠はない。

(二)  ところで、《証拠省略》を総合すると、第一凹凸面手前一〇メートル以内の本件道路上り第一車線上には、本件道路面上進行方向左縁路肩のコンクリート舗装部分を形成するコンクリートがひび割れた後に剥離して小さく割れた後の二ないし三センチメートル四方のコンクリート片(以下「本件コンクリート片」という。)が四ないし六個存在していたことを認めることができる。もっとも証人山口義男の証言中には、右コンクリート片の存在個所について、原告の指示により前記第一凹凸面より更に五〇ないし六〇メートル以上手前(池袋寄り)を見分したところ、道路路肩内でこれを発見したとの供述部分があるが、原告がかような遠方を指示するということ自体不自然であるし、前掲証拠によれば、第一凹凸面から約五メートル手前の走行車線の左縁と接する路面路肩部分(コンクリート舗装)には深さ約七センチメートル、長さ及び幅約二〇センチメートルの本件事故よりかなり以前からのものとみられる亀裂があったこと、他方山口証人がコンクリート片を発見したとされる個所の付近にはかような亀裂は存在しないことが認められ(この認定を左右すべき証拠はない。)る一方、本件のコンクリート片が他所から運ばれてきたことを窺うに足りる証拠はないから、右コンクリート片は右亀裂個所の一部分であって本件路面から剥離したものと推認するのが相当である。したがって、コンクリート片は右亀裂の付近に存在したものというべく、証人山口義男の右供述部分は採用しない。《証拠省略》も未だ右認定を左右するに足りない。他に右認定を左右すべき証拠はない。

3  本件事故の態様について

前認定にかかる本件道路面の状況に関する事実と《証拠省略》を総合すると、原告は、本件道路の上り第一車線上を池袋から竹橋方面に向って走行していたのであるが、本件事故現場手前付近から前方道路が左にカーブしているため、本件車両をやや左に傾けて道路左側を走行中、前認定の第一凹凸面手前付近の進行道路面上に本件コンクリート片を発見し、あわててこれを避けるため車体を更に左に少し傾け、自軍を内側に寄せて走行し、同所を通過するや、この不安定な体勢を立て直そうと自車を右に起こした矢先、凹凸面(第一)を前輪が通過して自車のバランスを崩すとともにハンドルをとられ、体勢を立て直しきれないまま次の凹凸面(第二)を前輪が再度通過するに及んで大きくハンドルをとられた挙句、バランスを回復できず右側路上に転倒して滑走し、原告主張の負傷をしたものであることが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

二  請求原因2について

1  本件道路に国家賠償法二条一項の瑕疵があったか否かについて判断する。

道路について国家賠償法二条一項にいう営造物の管理瑕疵があったかどうかは、当該道路の構造、用法場所的環境及び交通状況等諸般の事情を総合考慮して、道路がその用途等に応じ通常有すべき安全性を欠いているか否かを具体的、個別的に判断してこれを決すべきものと解しなければならない。これを本件についてみるに、前認定のとおり、本件道路はアスファルト舗装をされていること、記録によれば、本件道路は首都高速道路五号線と称される東京都心をほぼ南北に貫く中高速車対象の自動車専用道路であることが明らかであること、及び昭和五五年度交通量調査報告書と弁論の全趣旨によれば、本件道路は有料道路であり、昭和五五年一〇月二二日から翌二三日にかけての二四時間における本件道路の通行車両台数は約二万四〇〇〇台であって、交通量は非常に多く、二輪車から大型特殊車まで多種多様の車両が走行していることが認められる(右認定に反する証拠はない。)ことを総合して考えると、本件車両は自動二輪車であるが、本件道路上において運転技術のまちまちな運転者の運転する自動二輪車が相当の高速でひんぱんに走行することも通常予想されない事態ではないのであるから、右道路が通常備えるべき安全性としては、一般の道路のそれに比して一層高度のものが要求されるのは当然というべく、次に本件事故現場付近の道路状況についてみると、《証拠省略》によれば、本件事故現場手前から本件車両の転倒地点先にかけては、左に緩くカーブしていて、そのため道路面自体も左側に傾斜していることが認められ(右認定に反する証拠はない。)、更に、前認定のとおり、右カーブ部分の途中に、本件コンクリート片及び二個の凹凸面が狭い間隔をおいて原告の進行方向に順次ほぼ直列に存在していたものであるところ、四輪車であればともかく、一般的にいって走行安定性に乏しく、また、本件事故現場が左にカーブしているがゆえにより走行安定性を欠く状態を惹起している可能性が高い走行中の自動二輪車に対し、本件道路面のコンクリート片の存在は、これを避けるために一層車体のバランスを崩させ、これに続く二個の凹凸面の存在はそのような二輪車が更にバウンドするとともにハンドルまでもとられて転倒するに至る可能性を一段と高めるものとみても不自然ではないから、これら三者は一体となって本件道路における自動二輪車の走行にとって危険な道路の損傷を形成していたものというべきであって、本件道路の本件事故現場における右の状況のゆえに、本件道路は、本件事故当時、交通量の非常に多い東京都心主要有料自動車専用道路として、その通常有すべき安全性を欠いていたものというべきである。

2  なお、被告は、本件道路の管理を尽くした旨主張しており、なるほど《証拠省略》を総合すれば、被告の反論2(一)の事実関係を認めることができ、右認定を左右すべき証拠はない。しかしながら、右事実によれば、訴外協会による本件事故当日の本件道路のパトロールは、少くとも午後三時から本件事故発生の同日午後八時頃までの間には行われなかったことが明らかであるが、本件コンクリート片が本件道路の路面から剥離したものであること及びその剥離並びに凹凸面の状況については前認定のとおりであって、夏季にはアスファルトの軟化に伴う道路面の変化が生じやすいとはいえ、一朝一夕の間に発生したものとは考え難いから、このような剥離や凹凸面の状況からすれば、右のパトロールは、コンクリート面の剥離に至る路面の亀裂及び凹凸面の存在を、前日あるいはそれ以前にそれらが既に発生していたものであるのにこれを見落して本件事故発生の時点に至った(《証拠省略》によれば、右のような剥離や凹凸面の存在を、パトロールが見落すこともありうることが窺える。)ものと推認されるのであって、前記のようなアスファルト舗装を施され、交通量も多い東京都心主要有料自動車専用道路である本件道路についての夏季のパトロールとしては、訴外協会による本件道路の右パトロールはなお十分ではなかったものというほかないから、被告の委託を受けた訴外協会の右のパトロールを実施していたことをもって、本件道路の管理瑕疵についての責任をまぬがれることはできない。

3  次に被告は、本件事故の原因は、原告の制限速度違反、前方注視義務違反にあるとし、本件道路の前記瑕疵と本件事故との間の相当因果関係を争うのでこの点を検討するに、《証拠省略》によれば、本件道路の本件事故現場付近における制限速度が時速五〇キロメートルであり、それにもかかわらず、原告が時速約六〇キロメートルで本件車両を運転走行し(被告は、原告が時速七〇キロで走行していた旨主張するけれども、《証拠省略》中被告の右主張に沿うかのような部分は、所詮伝聞であってたやすく採用できず、他に右の点を肯認するに足りる証拠はない。)、同時に前方を十分注視していなかったため、本件コンクリート片及び凹凸面の発見が遅れたこと(ただし、高速道路を利用する自動車の運転者は、一般的には高速道路の安全性に信頼を置いているのであって、必ずしも常に道路にコンクリート片や凹凸面が存在することを予想して走行し続けているものとはいいきれないうえ、本件事故は、九月二日とはいえ午後八時頃に発生しており、照明灯はあるにしても、昼間に比し見通しが悪いことは明らかであり、加えて前認定にかかるそれら本件コンクリート片や凹凸面の状況からすると、それらの発見が必ずしも容易であったとはいえないのであるから、右の原告の不注意は、それほど程度の高いものではないといえる。)が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。しかし、前認定の道路の瑕疵がなければ本件事故が発生しなかったことは前示のとおり明らかであって、原告の右程度の不注意が存してもそれだけが本件事故の原因でないことはいうまでもないところであるから、右瑕疵と本件事故との間の相当因果関係を肯認するに何らさまたげはないものといわなければならない(ただし、原告の右の不注意については後記過失相殺においてこれを斟酌することとする。)。

4  以上のとおりであるから、被告は原告に対し、国家賠償法二条一項に基づき、原告が被った損害を賠償する責任を負う。

三  損害について判断する。

1  治療費 金一万二七八〇円

《証拠省略》によれば、原告は、昭和五六年九月二日から同月二六日までの間、九回にわたり、東京警察病院において本件事故による傷害の治療を受け、その費用として金一万二七八〇円を支払ったことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。したがって右の金一万二七八〇円は、本件事故と相当因果関係に立つ原告の被った損害であるというべきである。

2  自動二輪車修理費 金四八万九八五〇円

《証拠省略》によれば、請求原因3(二)の事実、及び原告は、本件車両の破損状況やその修理費との関係から同車両を修理して使用するつもりはなく、既に代替車両を購入していること、本件事故当時における本件車両の交換価格は約五〇万円であって、修理費を上回ることが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。以上によれば原告主張の修理費(金四八万九八五〇円)は、本件事故と相当因果関係に立つ損害というべきである。

3  ヘルメット代 金三万円

《証拠省略》によれば、原告は、本件事故により破損したヘルメットを昭和五五年一月ころ金四万円で購入したが、右ヘルメットは事故によって使用に耐えなくなったことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はないから、本件事故時点におけるヘルメットの価格は金三万円を下らないものと推認され、これが本件事故と相当因果関係にたつ損害となるものというべきである。

4  慰謝料 金一〇万円

本件事故による受傷の部位、程度、治療期間等は前認定のとおりであり、《証拠省略》によれば、原告は右受傷のため相当程度の精神的苦痛を被ったことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はないから、これに対する慰謝料としては金一〇万円が相当である。

5  過失相殺

原告の本件車両の運転には、前認定のとおり、速度及び前方注視についての不注意があったものであるから、この点を本件における他の諸事情と併わせ考慮のうえ、過失の割合を一五パーセントとして本件事故による損害賠償額の算定にあたり斟酌するのが相当である。

右1ないし4の金額を合計すると、金六三万二六三〇円となり、これから一五パーセントの過失相殺による減額をすると、その残額は、金五三万七七三五円(一円未満切捨て)となる。

6  弁護士費用 金七万円

《証拠省略》によれば、原告は、被告が任意に損害を賠償しないので、弁護士である原告訴訟代理人に本訴の提起及び追行を委任し、その報酬の支払を約束したことが認められるところ、本件事案の性質、内容、訴訟の経緯、認容額等諸般の事情を考慮すると、原告が本件事故と相当因果関係ある損害として賠償を求めうる弁護士費用は、金七万円とするのが相当である。

7  合計

以上によれば、原告が本件事故による損害として被告に対して賠償を求めうる金額は、金六〇万七七三五円となる。

四  結論

以上の次第であるから、原告の本訴請求は、金六〇万七七三五円及びこれから弁護士費用金七万円を除いた内金五三万七七三五円に対する事故発生の日である昭和五六年九月二日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、右限度でこれを正当として認容し、その余は、理由がないからこれを失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 仙田富士夫 裁判官 松本久 古久保正人)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例